フロイト関連書籍


フロイト自身の著作


ドイツ語

Sigmund Freud, Gesammelte Werke
S. Fischer Verlag
18巻からなるドイツ語版全集。amazon.deにいくと、現在でもハードカバーの各巻を入手できる。各巻のペーパーバック化・Kindle化も進んでいるよう。
Gesammelte Werke, Band 1 Band 2 Band 3 Band 4 Band 5
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Studienausgabe in zehn Baenden mit einem Ergaenzungsband.
S. Fischer Verlag
ペーパーバック版の主要著作集。全10巻+補巻。各巻ごとにも買える。

Sigmund Freud -- Werke im Taschenbuch
Fischer Taschenbuch Verlag
ドイツ語のペーパーバックのシリーズ。主な著作が収録されており28巻ある。

Kindle版フロイト著作集
主要著作のほとんどを1冊のKindle本にまとめたものが2種類出ている。内容は重なるが、目次の構成や収録著作に若干の違いもある。
Gesammelte Werke: Psychoanalytische Studien + Theoretische Schriften + Briefe (115 Titel in einem Buch - Vollständige Ausgaben)(German Edition)全集未収録のコカの論文などをも含む。
Sigmund Freud - Gesammelte Werke (German Edition)目次の構成がわかりやすい。書簡を多く含むのが特徴。


英訳

The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud
Norton
24巻からなる英訳全集。以前は英国のHogarth Pressが出版していたが、最近米国のNortonに移った。精神分析学が英語圏で発展したということもあり、フロイト全集については原語よりも英訳の方が「標準」となっているという状況がある。翻訳の問題などいろいろ指摘もされているが、編集・解説・索引の充実した全集としてその地位は揺るがない。 ぺーパーバック版( 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 )は、一冊ごとに買えるし安価なのでお勧め。主な著作にピーター・ゲイの解説をつけたシリーズもある。 また、編者による解説を集めて日本語訳したものが 『フロイト 全著作解説』 として出版されている。
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Penguin Freud Library
Penguin Books
英訳のペーパーバック。15巻からなり主な著作を収録。翻訳は上記標準版をもとに若干の変更がみられる。最近はとPenguin Modern Classicsいうシリーズに移行しつつあるようだ。

A Phylogenetic Fantasy: Overview of the Transference Neuroses
Belknap/Harvard
フロイトは1915年の春から夏にかけて一連の12の理論的論文を執筆し、『メタサイコロジイ序論』という1冊の本にまとめようという企てをしていた。そのうち『欲動とその運命』など5つは出版されたが、残りの7つは彼自身が廃棄したとされる。1983年に古いトランクから発見された草稿は、この失われた7編の最後のものだった!草稿の写真に活字化された独語原文・英訳およびGrubrich-Simitisによる解説がつく。


邦訳

フロイト全集 全22巻・別冊1
岩波書店
平成18年11月より岩波書店から刊行された新訳のフロイト全集。平成24年までに全22巻が出版され、別巻(総索引、用語対照表)を残すのみとなっている。再販はないようなので、現在では古本で手に入れるしかない。
フロイト全集 1 「失語症」他 1886‐94年
フロイト全集 2 「ヒステリー研究」1895年
フロイト全集 3「心理学草案」「 遮蔽想起」他 1895-99年
フロイト全集 4 「夢解釈」(前半)1900年
フロイト全集 5 「夢解釈」(後半)1900年
フロイト全集 6 「ドーラ」「性理論三篇」他 1901-06年
フロイト全集 7 「日常生活の精神病理学」1901年
フロイト全集 8 「機知」1905年
フロイト全集 9 「グラディーヴァ」他 1906-09年
フロイト全集 10 「ハンス」「鼠男」1909年
フロイト全集 11 「ダ・ヴィンチの想い出」「シュレーバー」他 1910‐11年
フロイト全集 12 「トーテムとタブー」他 1912‐1913年
フロイト全集 13 「ナルシシズム」「モーセ像」「精神分析運動の歴史」他1913-14年
フロイト全集 14「狼男」「 メタサイコロジー諸篇」 他 1914-15年
フロイト全集 15「精神分析入門講義」1915-17年
フロイト全集 16「処女性のタブー」「子供がぶたれる」他1916-19年
フロイト全集 17 「快原理の彼岸」他1919-22年
フロイト全集 18 「自我とエス」他1922-24年
フロイト全集 19 「否定」「制止,症状,不安」「素人分析の問題」他1925-28年
フロイト全集 20「ある錯覚の未来 」「文化の中の居心地悪さ」他 1929-32年
フロイト全集 21「続・精神分析入門講義」「終わりのある分析とない分析 」他 1932-37年
フロイト全集 22 「モーセと一神教」他1938年
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フロイト著作集
人文書院
岩波のフロイト全集以前にスタンダードだったもので主要な著作を網羅していた。今となっては過去のものだが、第8巻の書簡集は岩波版全集に含まれないフロイトの手紙を含んでいる。
フロイト著作集11巻の目次へ

フロイト技法論集
藤山直樹 監訳
岩崎学術出版
フロイトの著作から精神分析の技法についての論文を集めたもの。英語標準版を底本に独語全集、岩波全集なども参考に正確で読みやすい翻訳をめざしたもの。
収録論文>精神分析における夢解釈の取り扱い/転移の力動/精神分析を実践する医師への勧め/治療の開始について/想起すること、反復すること、ワークスルーすること/転移性恋愛についての観察/精神分析治療中の誤った再認識(「すでに話した」)について/終わりある分析と終わりのない分析/分析における構成

フロイト症例論集2―ラットマンとウルフマン
藤山直樹 監訳
岩崎学術出版
上記の技法論と同じシリーズ。「2」となっているのは、症例ドラと症例ハンスを含む「症例論集1」も予定されており先に2の方が出版になったからとのこと。

精神分析入門
フロイト自身の記した入門書。以前から多くの翻訳があり単行本や文庫本などで読むことができる。
新潮文庫版 精神分析入門 上下(「続精神分析入門」を収録) 高橋 義孝, 下坂 幸三 訳 【Kindle版あり】
中公文庫版 精神分析学入門 懸田 克躬 訳
中公クラシックス(新書) 精神分析学入門 1 懸田 克躬 訳 【Kindle版あり】
角川文庫版 精神分析入門 安田徳太郎, 安田一郎 訳
日本教文社(単行本) 精神分析入門 上 井村 恒郎, 馬場 謙一 訳

夢判断
単行本と文庫版がある。
日本教文社 夢判断  上 高橋 義孝, 菊盛 英夫 訳
新潮文庫版 夢判断 上 高橋 義孝 訳

メタサイコロジー論 【Kindle版あり】
戸川幸司 訳
講談社学術文庫
中期のメタサイコロジー論文に加え、廃棄され後に発見された草稿を収録した論文集。
収録論文>欲動と欲動の運命/抑圧/無意識/夢理論へのメタサイコロジー的補足/喪とメランコリー/転移神経症概要(草稿)

S.フロイト 自我論集
中山元 訳
ちくま学芸文庫
フロイトの理論的著作を選び文庫本一冊におさめたもの。
収録論文:欲動とその運命/抑圧/子供が叩かれる/快感原則の彼岸/自我とエス/マゾヒズムの経済論的問題/否定/マジック・メモについてのノート

S.フロイト エロス論集
ちくま学芸文庫
上記と同じシリーズで、性についての論文を集めたもの。
収録論文:性理論三篇/幼児の性器体制/リビドー理論/神経症者のファミリー・ロマンス/ナルシシズム入門/メドゥーサの首--草稿/フェティシズム/エディプス・コンプレックスの崩壊/解剖学的な性差の心的な帰結/女性の性愛について/性格と肛門愛/欲動転換、特に肛門愛の欲動転換について/リビドー的類型について

ヒステリー研究 上
ヨーゼフ・ブロイアー/ジークムント・フロイト
金関猛 訳
ちくま学芸文庫
「ヒステリー研究」の、ブロイアーの執筆部分も含めた完全な翻訳。

あるヒステリー分析の断片―ドーラの症例
ジークムント・フロイト
金関猛 訳
ちくま学芸文庫
「症例ドーラ」は夢分析を治療に応用した実例であり、また分析治療における転移の重要性をフロイトに再認識させた重要な症例である。金関猛による新訳でちくま学芸文庫のシリーズに登場。

モーセと一神教 【Kindle版あり】
ジークムント・フロイト
渡辺哲夫 訳
ちくま学芸文庫
数年前に日本エディタースクール出版部より出版された「新訳 モーセと一神教」が文庫化されたもの。フロイト最晩年の著作で、ユダヤ人及びユダヤ教の起源をさぐるという興味深いテーマを扱っている。ところどころに精神分析理論のわかりやすい解説が挿入されており、はじめてフロイトを読む人がチャレンジするにも適しているのではなかろうか。

幻想の未来,文化への不満  【Kindle版あり】
ジクムント・フロイト
中山元 訳
光文社古典新訳文庫
収録論文:幻想の未来/文化への不満/人間モーセと一神教(抄)

人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス  【Kindle版あり】
ジクムント・フロイト
中山元 訳
光文社古典新訳文庫
収録論文:人はなぜ戦争をするのか(1932)/戦争と死に関する時評(1915)/喪とメランコリー(1917)/心的な人格の解明(「続精神分析入門(1933)」第31講)/不安と欲動の生(同第32講)

「ねずみ男」精神分析の記録
北山修 編集・監訳
高橋義人 訳
井口由子・笠井仁ほか 解説
人文書院
フロイトの分析治療の直接的記録(カルテ)として唯一残っている「ねずみ男」の記録の本邦初訳。『フロイト全著作解説』といい、北山修氏はフロイト復興のためにすばらしい仕事を続けておられるようだ。

夢と夢解釈
金森誠也 訳
講談社学術文庫
フロイトによる夢に関する小論を集めたもの。「夢について」は有名な「夢判断」のフロイト自身によるダイジェスト版ともいえる著作。「実現した夢の予告」と「民間伝承の中の夢」は、本邦初訳とのこと。
収録論文:実現した夢の予告/夢について/民間伝承の中の夢/証拠手段としての夢/夢の中の童話の材料/夢とテレパシー/「デカルトの夢」に関するマキシム・ルロワへのフロイトの手紙/私とヨーゼフ・ポッパー=リュンコイスとの接触

性愛と自我
金森誠也 編・訳
白水社
帯広告には、「白水社創業80周年記念復刊」とある。最初の出版は昭和46年のようなので新しい訳というわけではない。初心者向きの比較的平易な論文を集めている。
収録論文:精神分析について/精神分析のむずかしさ/精神分析問答/「文明の」性道徳と現代の神経症/子どもの性知識によせて

自叙・精神分析
生松敬三 訳
みすず書房
著作集第4巻にも「自己を語る」として収録されている。フロイトの思考と精神分析の歴史を比較的コンパクトにまとめてあり、初心者が読み始めるのに「精神分析入門」よりも適当かもしれない。

グラディーヴァ・妄想と夢
ヴィルヘルム・イェンゼン /ジークムント・フロイト
種村季弘 訳
作品社
フロイトによる「W・イェンゼンの小説『グラディーバ』にみられる妄想と夢」は、著作集3巻にも収録されているが、本書では、評論の対象となったイェンゼンの小説と一緒に楽しむことができる。

ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡
アルバート・アインシュタイン/ジークムント・フロイト
浅見昇吾 訳
養老孟司 解説
花風社
1932年に国際連盟の企画により実現したアインシュタインとフロイトの公開書簡。フロイトの執筆部分は著作集第11巻にも収録されているが、アインシュタインの執筆部分と合わせての翻訳ははじめて。

失語論―批判的研究
金関猛 訳
平凡社
フロイトが精神分析医となる以前に神経学者として記した著書。この著書について研究した「フロイトの失語症論―言語、そして精神分析の起源」(ヴァレリー・D・グリーンバーグ著 安田一郎訳 青土社)という本もあり、その中にも付録の形で本論文が収められている。

フロイト フリースへの手紙―1887‐1904
ジェフェリー・ムセイエフ・マッソン編
河田晃 訳
誠信書房
フロイトが1887年から1904年にかけて友人のフリースにあてた手紙を集めたもの。彼の精神分析的著作が成立するまでの思考過程を知る上できわめて重要な資料。この膨大な著作の翻訳がこの時期(2001年)になって出版されたということは驚くべきこと。

フロイト最後の日記 1929-1939
ジークムント・フロイト
ロンドン・フロイト記念館 所蔵
マイクル・モルナール 編集・解説
小林司 訳
日本教文社
フロイトが若いころそれまでに書いた日記を廃棄したのは、有名なエピソード。こちらの「最後の日記」は日々の出来事のリストをメモ書きのように記したもので、一般に「日記」としてイメージされたものとは異なる。詳細な解説がつけられた豪華な本でフロイトの人生を知る上で貴重な資料だとは思うが、12000円と高価なのでマニア向けか。

フロイト=ユンク往復書簡(上)(下)
W・マクガイアー ,W・ザウアーレンダー 編集
金森 誠也 翻訳
講談社学術文庫
フロイトは多くの著作の他に、膨大な手紙を残している。ユングとの往復書簡はとりわけ重要なもので、2人の接近から熱烈な関係、そして不和へのドラマが展開されている。強烈なフロイト個人の一面をうかがえ、興味はつきない。フロイト理論を理解するためのヒントとなるところもあるものの、出版された著作の精読こそが大切である。

その他(絶版や在庫切れで手に入りにくいものなど。)
フロイト選集 日本教文社:人文書院の「著作集」以前はスタンダードであったが、現在は精神分析入門と夢判断以外は在庫切れの状態。amazonのマーケット・プレイスで手に入る。
フロイト/ユング往復書簡集 上 :単行本でかつて出版されたものだが、現在では新訳が文庫版で手に入るようになった。
日常生活に於ける精神病理(岩波文庫) :岩波文庫はかなり古いものも時々再版しているので気長に待てば手に入るかも。
完訳・世界の大思想 (3) フロイト (河出書房新書 菊盛英夫訳 収録論文:三つの性欲論/自我とエス/文化の居心地悪さ/なぜに戦争が?/続精神分析入門):1984年に出版されたこのシリーズで、1ウェーバー、2カントに続いてフロイトが選ばれたというところがすばらしいが、なぜかその後が続いていないよう。最近(2004年9月)になって、同じ出版社から「ワイド版世界の大思想」というシリーズがでて、その第1期14巻がフロイトになっている。画像からみたところでは同じ訳者による精神分析入門と自叙伝のよう。
フロイトのラブレター :なんと「山本コウタロー翔訳・文」とある。フロイトが婚約中にマルタに書いた手紙(詳しくは書いてないが、著作集に掲載されているものをアレンジした?)に、山本コウタローのエッセイがつけられている。amazonのマーケット・プレイスで手に入る。(「山本コウタロー」といっても若い人は知らないかもしれないが、「走れコウタロー」や「岬めぐり」といったヒット曲で一世を風靡したフォークソング・シンガーである。)



フロイトの伝記

フロイトの生涯
アーネスト・ジョーンズ著
竹友安彦ら訳
紀伊国屋書店
フロイトの弟子であるジョーンズによる権威ある伝記。原作は3巻でLondonのHogarth社から出版され、その短縮版がPenguin Bookで手に入る。邦訳はこの短縮版の訳のようだ。

フロイト 1
ピーター・ゲイ 著
鈴木晶 訳
みすず書房
著者のピーター・ゲイは、現在のフロイト研究家の中でもっとも優れた人の一人であろう。かなりのボリュームだが、フロイトの生涯、時代背景、著作の解説などがバランスよくまとまっていて興味深く読める。フロイトの伝記の決定版と言ってよいだろう。

フロイト―その思想と生涯
R・ベイカー 著
宮城音弥 訳
講談社現代新書
手軽で最初に読みやすいものとしてはこのあたりでしょうか。


フロイトの解説書

膨大な数にのぼると思うが、手元にあるものから一部を紹介する。

フロイト―その自我の軌跡
小此木啓吾
NHKブックス
日本の精神分析学大家による解説書。他にも同じ著者によるフロイト・精神分析関係の本は多数あり、さらに『モラトリアム人間の時代』など読みやすい一般向けの本でも広く知られている。

フロイト―無意識の扉を開く
ピエール・ババン著
小此木啓吾訳
創元社
写真や絵が多く、視覚的に楽しく読める。

フロイト FOR BIGINNERS
リチャード・アピグナネッセイ文
オスカー・サーラティ絵
加瀬亮志訳
現代新書
漫画による解説だが、なかなかよくできている。その名のとおり初心者におすすめ。

フロイドを読む
岸田秀
青土社
著者は独自のフロイト研究から「唯幻論」を展開し、『ものぐさ精神分析』など著作多数がある。この本は、題名から想像するような一般的解説書ではなく、フロイト理論をてがかりに著者自身の心の問題を自己分析するといったもの。河出文庫版「岸田秀コレクション」収録のものもあり。

フロイト 全著作解説
ジェームス・ストレイチー 著
北山修 監訳・編集
人文書院
冒頭で紹介した英訳標準版全集において全著作につけられたストレイチーの解説部分を日本語訳し、さらに日本語訳についての情報をつけたもの。



フロイトが読んだ本

フロイトがその著作の中で引用した本、鍵概念のもととなった著作など。

オイディプス王
ソポクレス 著
藤沢 令夫 訳
岩波文庫
「エディプス・コンプレクス」という語のもととなった有名なギリシャ悲劇。

シャルコー神経学講義
クリストファー・G・ゲッツ 著
加我 牧子・鈴木 文晴 訳
白揚社
神経内科学の基礎を築いたシャルコーがサンペトリエール病院で行った講義に解説を加えたもの。若きフロイトもパリに留学してこの講義を聞いて感銘を受け、講義録のドイツ語訳もてがけた。

図説 金枝篇
サー・ジェームズ・ジョージ フレーザー 著
サビーヌ・マコーマック 編
内田 昭一郎・吉岡 晶子 訳
フレーザーの著作などの知見をもとに、フロイトは『トーテムとタブー』で人類文化の起源に精神分析的考察によって光をあてようとした。フレーザーの代表作『金枝篇』は、以前から短縮版が岩波文庫に収録されており、完全版の日本語訳が現在進行中。ここにあげた図説版は豊富な図版を挿入して読みやすく編集したもの。

人間の進化と性淘汰1・2
チャールス・ロバート・ダーウィン 著
長谷川 真理子 訳
文一総合出版(ダーウィン著作集)
同じく『トーテムとタブー』では、ダーウィンが上記著作で提示した「原始ホルド仮説」をヒントにエディプス・コンプレクスの歴史的解釈が展開される。

ヴェニスの商人
シェイクスピア 著
中野 好夫 訳
岩波文庫
フロイトはシェイクスピアを愛読した。有名な『ハムレット』や『オセロ』は著作でたびたび引用されている。『ヴェニスの商人』については『小箱選びのモティーフ(1913)』で分析し、男性にとっての3種類の女性イメージという興味深い観点から論じている。

ホフマン短篇集
E・T・A・ホフマン 著
池内 紀 訳
岩波文庫
『不気味なもの(1919)』では、ホフマンの短篇小説『砂男』を題材にして不気味さという独特の感情について考察している。河出文庫『砂男 無気味なもの―種村季弘コレクション』では、フロイトの論文と両方読める。

カラマーゾフの兄弟 上 中 
ドストエフスキー 著
原 卓也 訳
新潮文庫
『ドストエフスキーと父親殺し(1928)』では、作品における父親殺しのテーマと著者ドストエフスキーの人格について分析している。

ある神経病者の回想録
ダニエル・パウル・シュレーバー 著
渡辺 哲夫 訳
筑摩書房
フロイトはこの本を読んで『自伝的に記述されたパラノイア(妄想性痴呆)の一症例に関する精神分析的考察』を記した。

群衆心理
ギュスターヴ・ル・ボン 著
桜井 成夫 訳
講談社学術文庫
フロイト『集団心理学と自我の分析』の中で引用。

エスの本―無意識の探究
ゲオルク・グロデック 著
岸田 秀・山下 公子訳 
誠信書房
『自我とエス』で提唱された後期構造理論(第二局所論)における「エス」の概念はこの本から借用された。

ユダヤ・ジョーク集
ラビ・M・トケイヤー 著
加瀬 英明 訳
講談社文庫
『機知―その無意識との関係―』では、ユダヤの機知がたくさん紹介されていておもしろい。フロイトがこの著作そのものを読んだわけではないがユダヤ・ジョーク独特の笑いにふれることができる。

聖書―新共同訳 旧約聖書続編つき
共同訳聖書実行委員会・日本聖書協会 訳
『ミケランジェロのモーゼ像』では、有名なミケランジェロの石像(不信心な民を見て怒り十戒を記した石版を叩き割ろうとしたモーゼの姿)を分析。最後の著作『モーセと一神教』では、出エジプト記を分析しユダヤ教の起源をさぐった。


その他(パロディーなど)

フロイトの料理読本
J・ヒルマン C・ボーア 著
木村定 池村義明 訳
青土社
フロイトが晩年に英語で書いた料理レシピという体裁をとっているが、もちろん著者らによって創作されたパロディー。注意しないといけないのは、翻訳者の解説から帯広告まであたかもフロイトの著作であるかのように書かれていること。おもしろいが、フロイトの生涯や精神分析についてある程度の知識がないとわからない。逆にこのようなパロディーが成立するということは、欧米での精神分析に関する知識の普及をあらわしているのか。


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